
草加は津田を褒める時に頭を撫でる事がある。
それが自分に親しみを込めている証拠であると津田は知っているのだが、もう小さな子供ではあるまい。
頭を撫でられるのは少々気恥ずかしい物がある。津田は眉を深く寄せて「やめてください」と言った。
すると草加は津田の頭から手を離して、驚いたように「嫌なのか」と訊いた。津田は眉を寄せたまま黙り込んだ。
確かに気恥ずかしいとは思うのだけれど、嫌と言う訳では決してない。
彼の手の平がそっと触れる。優しく包まれるこの感じがとても好きだ。
けれど、子供のように褒められて嬉しい気持ちになるのを認めてしまうのは恥ずかしい事だと思った。
俯いて、思案する津田を草加は見つめている。「嫌ではないのだろう?」草加は断定の意味を含めてそう言った。
全く言葉の通りだった。津田は自分の顔が赤くなっているのだろうと思った。顔を見られないようにと俯く。
草加はそんな津田を笑って見ている。津田は暫く間をおいて、俯いたまま「はい」と答えた。消え入るように小さな声だった。
「なら良いではないか」さらりと言ってのけた草加は再び津田の頭をそっと撫でた。
そして津田を体ごと引き寄せ抱き締めた。「貴様は本当に可愛い奴だな」
津田は可愛いと言われてますます複雑な心境になったが言い返す事はやめにした。
(やめてほしいと告げた所でやめるような人ではない)
漸く津田は目線をあげて草加の顔を見た。するとそこには草加の満面の笑みがあった。
二つの瞳が私を捉えて離さない。これは私だけに向けられた笑顔だ。
彼のなにもかもが特別に見える。彼が持つ美しい瞳の中に、私はどのような姿で映るのだろう。
私が貴方を見るように、輝きを放つ光に見えるのだろうか。
日常の小さな挙動の一つ一つがこんなにも影響する。
貴方はいつも難しい問題を投げかけて私を困らせるのだ。
aoto.
06/12/24
Problem that cannot be solved.

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