俺は驚愕した。こんな事がある筈は無い。 毛だ。俺の手の平に無数の毛がびっしりと生えている。しかも両手に。甲ではなく手の平にだ! 毛が生えている原因よりも、どうして今の今まで気が付かなかったのかがわからず頭を抱え込んだ。 髪の毛のように太くしっかりした無数の毛が黒々と手の平から生えている。 長さは不揃いで、長い物で30cm程もあった。あまりに信じがたい光景だ。 しかも一本一本が強い“くせ毛”になっている。ふざけているのか。 恐る恐る右手の毛を一本左手の指で摘んで引っ張ってみると、小さな痛みを感じた。 信じたくは無いが、間違いなく俺のから生えている毛だった。こんなものは寝る前には生えていなかった。断言する。 すると俺が一晩眠っている間にこれだけの毛が生えたてきたと言うのか。この無数の、おぞましい数の毛が! 目眩がする。血の気が一気に引いていった。 一気にカミソリで剃ってしまえば解決するのだろうが、剃っただけではまたこれらの毛は生えてくるだろう。 脱毛クリームを塗り込だ所で結果は同じだ。何しろこれは毛だ。毛穴があれば毛は半永久的に生えてくる。 では脱毛すれば良いのだろうか。手の平の毛を脱毛?そんな話は聞いた事がない。 そもそも手の平に毛穴があるのかどうかも俺は知らないし、こんな風に毛が生え放題の手の平を見た事はない。 うねった黒い髪が健康的だろうと言わんばかりに艶々と輝く。 その生々しさがおぞましく、気持ちが悪かった。 さっさと剃ってしまおう。俺は水道の蛇口を捻り石鹸を手の平で泡立てた。 大量の毛のせいか石鹸が妙にもこもこと泡だつ。しかしその泡は段々灰色になり、ついには真っ黒になった。 毛が、溶けている! 水で一気に洗い流すと、手の平の忌まわしい毛は跡形もなく消え去っていた。 俺の手の平は初めから何も無かったかのように、さっぱり元通り奇麗になった。 そうだ。初めから毛など無かったのだ。 これ以上気にしてはいけない。俺は疲れている。


aoto.
05/09/30
You enchant me.

意味不明。雅行のつもりけどタッキーでも良いかも。