彼ははじめて見る雪に驚き、
空から舞い落ちる白く冷たいものを捕まえようと手をかざした。
しかし手にすることは出来なかった。
先程確かに触れたものは何処へ消えてまったのだろう。
彼にはそれがわからなかった。

彼はしゃがみ込んで両手に雪をすくった。
今度は手にすることが出来た。彼はとても嬉しく思った。
団子のように丸めて一つ一つ並べていく。
彼は懸命に、時間を忘れる程大量の丸い雪の塊を作り続けた。
その手はすっかり赤くなっていた。

母の呼びで部屋に戻り、
彼は暖かいスープを飲みながら窓の様子を伺っていた。
雪は次第に弱まり、雲間から太陽の光が射し込んだ。

彼は気づかぬうちに眠っていた。
いつの間にか窓の外は夕闇の、夜へと染まり行く色をしていた。
父の帰りは早かった。ケーキを買ってきてくれていた。


雪は音もなく降り積もる。
そして音もなく溶け消える。
濡れた土が雪の所在を証明している。
しかしやがてその痕跡も消えてしまうだろう。
彼自身の記憶からもいつしか。


aoto.
20060722〜20081127
Proof of existence.


aoto.
08/10/27

色々あって一度サイトを凍結させた時トップに置いた物です。
当時の思いが錯綜してしまうので読み返せなかったんですが、
いざ読み返すと文章としてはそこそこ良い感じなのででひとまず。
当時、ぶっちゃけあのまま消えたかった思いが最後5行に出ていますが、
客観視するとなんだか草加っぽい雰囲気ですね。