辺り一面に咲乱れる桜を見て草加は言った。
「春になると楽しい気持ちになるのは、美しいものが溢れているからかな」
津田は「何時の季節も美しいもので溢れています」と首を軽く振って返す。
春は桜の色が世界を華やかに彩る。草花が芽吹き、淡く優しい色に包まれる。
夏は冴え渡る新緑と澄み渡る青い空。白い雲が大きく育ち、雨を降らして土を濡らす。
秋は赤や黄色と、派手な衣装を山々が着飾る。紅葉や銀杏の、まるで芸術のような葉の形。
冬は舞い落ちる雪が淑やかに街を化粧する。吐く息の白さ。形なき者が姿を現す唯一の季節。
変化する四季。季節が移り行く姿。尽きることのない美しさ。日本は美しさで満ちている。
「ですが、私にとって最も美しいものは…」
津田は草加の顔をぐいと顔を引き寄せて口づけた。
貴方が一番美しく、眩しく映る。貴方がいれば世界の全ては美しい。
草加の耳元で津田はそう囁いた。
津田は草加の背中に手を回して強く抱き締める。草加の体温が伝わる。
柔らかくて暖かい。このまま沈み込んで眠りにつきたくなる。
まるで春のような人だと思った。

桜の花弁が風に揺れて靡く。暖かい光が溢れて世界を満たす。
強い風が吹いて、ひらひらと薄紅色の花弁が宙を舞う。
視界を覆い尽くすような花吹雪。
柔らかな薄紅色の色彩は私達の足下へと静かに着地した。
私達と、美しき生命の欠片は春光の中にあった。


aoto.
07/02/19(直:07/6/30)
Petal that flies up



舞い上がる花弁。
津草?津田っちが凄い事を言っている。